
~あなたのお店の本当の価値とは~
皆さん、自分のお店って、いくらで売れると思いますか?
例えば、開業するのに3,000万円かけました。
内装も厨房設備も、かなりお金をかけて作りました。
じゃあ、そのお店は3,000万円で売れるのか?
残念ながら、そういうわけではないんですね。
逆に、開業して10年、設備も古くなっている。
でも、3,000万円、場合によっては5,000万円で売れるお店もあります。
この違いは何なのか。
私は、飲食店の価値を考えるときに、大きく4つのポイントがあると思っています。
① 利益 ― 結局、いくら儲かっているのか?
まず、一番大切なのは利益です。
売上が1億円あります、という会社でも、利益がほとんど出ていなければ、買う側にとってはなかなか魅力がありません。
逆に、売上5,000万円でも、しっかり利益が出ていれば、十分に価値があります。
ここで出てくるのが、EBITDA(イービットディーエー) という考え方です。
ちょっと難しい言葉ですけど、簡単に言えば、税金や金利、減価償却などの影響を除いて、事業そのものがどれくらい稼いでいるか、という指標です。
ざっくり言えば、営業利益に減価償却費を足したものですね。
例えば、年間の営業利益が500万円、減価償却費が300万円。
そうすると、EBITDAは800万円になります。
じゃあ、この800万円の利益を生み出す会社を、いくらで買うのか。
仮に3年分の利益を評価するなら2,400万円。
5年分なら4,000万円ですね。
もちろん、実際には借入金や現預金、将来のリスクなども考えますので、そのまま売却金額になるわけではありません。
ただ、「この事業は、毎年いくら稼ぐ力があるのか」。ここが企業価値を考えるうえでの出発点になります。
② 資産 ― 3,000万円かけた設備は、3,000万円の価値があるのか?
次に、資産です。
飲食店のオーナーさんと話をしていると、よくこういうお話があります。
「このお店、内装と厨房で3,000万円かかっているんですよ」
お気持ちはよくわかります。
でも、ちょっと考えてみてください。
皆さん、500万円で新車を買いました。
5年乗って、走行距離もそれなりに増えています。
その車を売るときに、500万円で買ってくれとは言わないですよね。
中古車には中古車の価格があります。
飲食店の厨房設備や内装も同じなんです。
会計上は減価償却という形で、年数とともに費用にしていきます。
ただし、減価償却後の帳簿価額と、実際に売れる中古価格は別物です。
帳簿上はほとんど価値がなくても、まだ十分使える厨房設備もあります。
一方で、内装に2,000万円かけていても、次の買い手が全部壊してしまうのであれば、その買い手にとって価値はほとんどありません。
つまり、大事なのは、
「いくらかけたか」ではなく、「次の人にとって、いくらの価値があるか」なんです。
③ 場所 ― 儲かる立地には、それ自体に価値がある
3つ目が、場所です。
飲食店って、やっぱり立地商売ですよね。
駅前なのか、繁華街なのか、住宅街なのか。
同じ料理、同じ価格、同じサービスでも、場所によって売上は全然違います。
例えば、駅前の非常に良い場所で、家賃も周辺相場より安い。
しかも、簡単には同じような場所を借りられない。
こういうお店は、それだけで魅力があります。
昔でいうところの、権利金のような価値ですね。
もちろん、法律上の借地権などと同じ意味ではありません。
ここでいうのは、良い場所で商売を続けられるという、営業上の価値です。
例えば、同じ売上、同じ利益のお店が2つあったとします。
一方は、駅前の一等地で家賃も安い。
もう一方は、集客が難しい場所で、家賃も高い。
どちらを買いたいですか?
多くの方は前者を選ぶでしょう。
ただし、その価値が買い手に引き継げることが前提です。
貸主が承継を認めてくれなかったり、次の契約で家賃が大幅に上がったりすれば、評価も変わってきます。
ですから、飲食店の価値には、単なる設備だけでなく、その場所で商売できること自体の価値もあるんです。
④ 自走 ― あなたがいなくても、そのお店は回りますか?
そして、4つ目。
私は、これが非常に大事だと思っています。
皆さんにお聞きしたいんですが、
「明日から、あなたがお店に来なくなっても、そのお店は回りますか?」
例えば、オーナーさんが料理長で、仕入れもやる。
スタッフの採用も、シフト管理も、売上管理も全部やる。
常連さんも、オーナーさんがいるから来ている。
これ、非常に良いお店かもしれません。
でも、買う側からすると、ちょっと困るんですね。
だって、そのオーナーさんが辞めた瞬間に、お店が回らなくなるかもしれない。
そうなると、事業を買うというより、設備と場所を買うだけになってしまいます。
一方で、店長がいて、料理長がいて、スタッフも育っている。
仕入れ先も決まっていて、マニュアルもある。
オーナーさんが1か月旅行に行っても、売上も利益も大きく変わらない。
こういうお店は、買う側としては安心できますよね。
自走しているお店は、利益の再現性が高い。
だから、同じ利益が出ていても、オーナーさんがいなければ回らないお店と、自走しているお店では、評価が変わってくるんです。
まとめ ― お店の価値は、過去ではなく未来で決まる
皆さん、今日お話ししたのは、4つです。
- 利益 ― EBITDAで、どれだけ稼ぐ力があるのか。
- 資産 ― 設備や内装に、今どれだけ価値があるのか。
- 場所 ― その立地で商売を続けられる価値があるのか。
- 自走 ― オーナーがいなくても、利益を生み出せるのか。
つまりですね。
3,000万円かけて作ったから3,000万円で売れる、という話ではないんです。
年間800万円の利益が出ていて、その利益が今後も続く。
設備も使える。立地も良い。
さらに、オーナーがいなくても商売が回る。
そういうお店であれば、買いたいという人が出てくる可能性は高くなります。
逆に、いくら立派なお店でも、利益が出ていない、設備も古い、オーナーがいなければ営業できないとなると、なかなか高い値段はつきません。
最後に、私が皆さんにお伝えしたいのは、
「お店の価値というのは、これまでにいくらお金をかけたかではなく、これからいくら稼げるかで決まる」
ということです。
そして、今すぐ売却する予定がなくても、この4つを意識して経営していただくと、お店そのものが強くなります。
これは、将来売却するときだけではなく、事業承継や多店舗展開を考えるうえでも、非常に大切なことだと思います。



